法人で前期が黒字で税金を払っていて、今期は赤字になってしまった場合、前期に払った税金を還してもらえる制度(欠損金の繰戻還付)があります。
赤字を翌期以降の黒字と相殺するか、前期の黒字と相殺するか
会社の決算で最終的に赤字になった場合、その赤字を利用して税金の負担を減らすことができます。
使い方は主に以下の二つ。
- ① 赤字を翌期以降の黒字と相殺して、翌期以降の税金を減らす(繰越控除)
- ② 赤字を前期の黒字と相殺して、前期に払った税金が戻ってくる(繰戻還付)
①は、今期発生した赤字を翌期以降に発生した黒字と相殺する使い方です。
例えば、今期赤字が△50、翌期は100の黒字だったとします。
この場合、今期の赤字△50と翌期の黒字100を相殺します。
すると、翌期の黒字は50になります。
税金は利益が大きいほど増えますので、黒字が100から50に減った分、税金の負担も減ります。
当期発生した赤字であれば、10年繰り越して利用できます。
このように今期の赤字を翌期以降に繰り越して、翌期以降の税金の負担を減らすのが①の制度。
今回説明するのは、②のほうです。
①が翌期以降の黒字と相殺するのに対して、②は前期の黒字と相殺します。
前期に払った税金が戻ってくるので、「繰戻還付(くりもどしかんぷ)」と言われています。
前期の黒字と相殺して、すでに払った前期の税金のうち、赤字分の税金を還してもらえるというものです。
わかりにくい制度なので、図を使って考え方をみていきます。
前期の黒字と相殺して、税金が戻ってくる
具体的に例を使ってみてみます。
まず、前期が500万円の黒字だったとします。
法人税が15%とすると、税金は75万円です。
この税金75万円は前期の確定申告で払っています。
そして、当期200万円の赤字となったとします。
この赤字を前期の黒字500万円と相殺します。
そうすると、前期の黒字は500万円ー200万円=300万円となります。
この相殺後の黒字に直して税金を再度計算すると、税金は45万円です。
相殺後の税金が45万円なので、既に前期に支払った75万円の税金と比べると、30万円少なくなりました。
この30万円が戻ってくるということになります。
ちなみに、当期の赤字が前期の黒字より大きい場合は、黒字を超えた分の赤字の金額を翌期以降に繰り越して、翌期以降の利益と相殺が可能です。
例えば、前期が500万円の黒字、当期が700万円の赤字の場合、黒字は500万円なので700万円の赤字のうち200万円は使えず余ってしまいます。
この余った200万円は、翌期以降の黒字との相殺に利用できるのです。
前期が黒字で今期が赤字になった場合、前期の黒字と相殺か、翌期以降の黒字と相殺かという選択を検討することになります。
来期以降業績が回復してある程度利益が出る事が見込めるなら、前期の黒字と相殺を選択しないで、翌期以降の利益との相殺に利用して、将来の税金の負担を減らすという選択もあります。
前期まで業績が好調だったものの、今期はコロナの影響で業績が落ち込んで赤字になり、
・翌期以降も業績の回復が現時点でしばらく見込めない
・資金繰りが厳しい
というような場合は、前期の黒字との相殺を利用してお金が手元に戻ってきた方がメリットがあると言えるでしょう。
要件
前期の黒字と相殺する制度を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
対象は中小企業
コロナの特例で資本金10億円以下の法人まで対象が拡大されています。
大企業の子会社は対象外です。
前期と当期の両方、青色申告の確定申告書に提出
前期と当期のどちらも、青色申告により確定申告書を提出する必要があります。
当期(赤字の年)の確定申告書を提出期限までに提出。一緒に、請求書も提出する
赤字が発生した決算の確定申告書を提出期限までに提出します。
そしてその提出と一緒に、「欠損金の繰戻し還付による請求書」という書類を税務署に提出して、請求します。
勝手に税金が戻ってくるわけではなく、この書類を提出して会社の方から請求しないと税金は戻ってきません。
あとから請求することはできませんので、忘れないようにしましょう。
留意点
戻ってくる税金は国税のみ(法人税、地方法人税)のみで、地方税(事業税等、都道府県民税)については還付制度はありません。
地方税では翌期以降繰越し控除を利用することになります。
まとめ
コロナの影響で、前期までは好調だった会社も今期は赤字になるという会社が多いと思います。
来期以降の業績の回復が見込めそうにない、資金繰りが厳しい場合は、活用しましょう。
■編集後記
今日は髪を切りに。帰りは歩きで。
■1日1新
諏訪の森公園
■1日1曲
「Ize Of The World」The Strokes
やっと生で観れると思っていましたがフジロック中止で夢叶わず。来年来てくれるのかなー(そもそも開催できるのだろうか)。3rdもなんだかんだ良い曲あります。